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雨の降る公園でCM撮影をしていたとき、たまたま走りに来ていた誠人を、エキストラと間違って沙紀が強引に誘導したのがきっかけだった。勘違いだと気付いても、モデルさんみたいにカッコイイから間違ったと言って、誠人を撮影に参加するようにしつこく誘った。沙紀の一目惚れだった。
沙紀の粘り勝ちで付き合い始めると、本業だけでは給料が少ないためバイトをせざるを得ない誠人に練習に専念してもらうため、数か月後には同棲を始めた。
付き合ってからの誠人は、野球第一であるところは変わらなかったが、沙紀を野球仲間やファンに彼女として紹介してくれたのが何よりもうれしかった。
玄関に立ったままの沙紀の足元には、水溜まりができていた。
誠人は苦々しい表情で続けた。
「沙紀が応援に来た試合って、必ず雨が降ってただろ。ずっとすごい偶然だなと思ってたんだけど、まさか『雨女』だったなんてね」
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