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誠人には試合のたびに応援に来てよと誘われていた。とてもうれしかったし、本当なら何としてでも毎回欠かさずに行きたかったが、行けば、どうしても雨が降ってしまう。だから、沙紀はわざと用事を作って行かないことも多かった。自分が『雨女』だからとは言えずに……。
「沙紀が来るたびに大雨になって、試合が中止になることだって一度や二度じゃなかっただろ?」
沙紀は泣きそうになるのを笑顔でごまかしながら言った。
「えーやだ、『雨女』なんて本当に信じてるの? まあでも誠人がどうしても気になるなら、わたし、もう二度と試合に行かない。それならいいでしょ?」
「ごめん。これ以上、沙紀と一緒にいたら、自分も『雨男』になっちゃう気がして、メンタル的によくないからさ」
「誠人が、『雨男』に……」
誠人のあまりの言い分に、沙紀はなんと反論すべきかわからなかった。
誠人の決意は固く、あのあと沙紀は部屋を飛び出した。その後、直接会って話すこともなく、正式に別れることになった。
数日後、一日留守にしているから、今日中に荷物を運びだしてほしいと誠人に言われ、沙紀はアパートに来ていた。
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