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荷物といってもそれほどあるわけではなかった。もともと、誠人が借りていたアパートに家賃を半分払うからと押しかけてきた身だったし、その後も何かを好きに買うような余裕もなかったため、物が増えることもなかった。
最後の段ボール箱を運び出したところで、雨が降りだしてきた。沙紀は、あわてて段ボール箱を車のトランクに積み、運転席に乗り込んだ。
会社の社長にはずいぶん迷惑をかけてしまった。アパートを飛び出して数日間、無理やり会社の休憩室に居候させてもらったし、今日だって車を貸してもらった。さらに給料の前借りもさせてもらえるだろうか……。
沙紀は、今後のことで頭を悩ませながら、車のエンジンをかけた。
すると、さっきまでのリクエスト番組が終わり、隣りの市で開催されている地方リーグの野球試合実況がラジオから流れてきた。二回が終わったところで、誠人のチームはすでに3点ビハインドで負けていた。こちらは雨が降っているが、隣りの市は晴天らしい。
すっかり忘れていたが、誠人が今日一日留守にすると言っていたのは、試合があるからだったのだ。
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