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それにしてもわざわざ試合のある日に荷物を取りにこさせるなんて、そこまでして会いたくなかったのだろうか。『雨女』がうつるから!?
別れの理由が『雨女』だからなんて、これ以上あきれた理由があるか!
誠人の野球バカなところが大好きだったが、単純に馬鹿すぎないだろうか。
『雨男』になっちゃいそうなんて、だったらその気分を味わってもらいましょうか!
沙紀は車をUターンさせて、目的地を試合が行われている隣の市に変えた。
雨が降って、試合が中止になればいい。
走り続けて、隣りの市に入った。球場まであと少しだ。
しかし、この一年は何だったのか。こんなにあっけなく『雨女』に壊されてしまう程度の関係だったのか。
沙紀は車を走らせながら、自分を見てせせら笑う『雨女』が車の外に見えるような気がした。
子供の頃は、『雨女』とからかわれては密かに傷つき、心の中に住む、自分に似た顔の『雨女』が消滅してくれることを切に願っていた。
大人になるにつれて、そんな『雨女』は見なくなったと思っていたのに……。
『打ったー! 打ちましたー! 江村選手、特大のスリーランホームランです!!』
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