雨乞い

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 小さな村の中で代々この役割を担ってきた。代々続けることができたのは技術があったからだと祖母は言っていた。それはそうだろう。長じてから記録を読んだとき失敗したら死ぬことが当たり前だったことに気付いて代々続く方がおかしいのだとわかったのだから。  空を読むのもいつやるかを人に納得させるのも技術であって、どうしようもないからと祈る儀式として雨乞いをやるのは間違っている。祖母の話をすべて聞いていてそれで私はそう理解した。それを父も兄も妹も、みんなわからなかったのだろうか。  そして跡を継いだのは私だからと家族はみんな私にやらせようとする。今だろうと父は言う。お前の仕事だと兄は言う。尊敬していると妹は言う。私が今じゃないと言ってもこの人たちには届かない。母は元々この家の人ではなくて父のもとに嫁いできたからよくわからないのだろう、悲しそうな顔で頑張ってというだけだ。けれどその母も他の三人が言うからか止めようとはしてくれない。  だからこの雨乞いは失敗する。いつもより盛大でいつもよりしっかりと、そうして久々に失敗する。そんなこともわからないのだろうか。
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