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花瓶の衝撃
「っ?」
声を出しかけた湊は、歯ブラシへと伸ばした手を即座に戻して口元を押えた。
扉の叩く音を、湊は息を殺して聞いていた。
ガチャガチャと扉のノブを捻る音、そして、子供の泣き声。
助けなきゃ。助けないと、あの子が危ない目に合うかもしれない。
頭は助けようとしているが、震えあがった体は、動いてくれなかった。
悔しさから、目に涙を貯め、唇を噛みしめた。
「僕には…」
僕には助けられない…
あの子も、僕みたいに酷いことを…
湊は、悔しくて悔しくてとめどなく流れていく涙を拭うことも忘れ、声を噛み殺して泣いた。
そんな時、ひとつの声が聞こえてきた。
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