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花瓶と花
「何してるの?逃げられたならさっさと探しに行ってよ」
「すっ、すいません!」
「…全く。逃しちゃったかぁ。」
ゆっくりとした、それでいておだやかな声色だった。
湊の体は震えることを辞め、勝手に歩き出した。
がチャリ、とドアノブを捻られるのは簡単な事だった。
「…この子供は、どうしようかなぁ…」
「待ってください!!!!」
ガチャリと開いた扉の勢いに任せて体を前に出した湊
待ったをかけたはいいが、湊自身、スローモーションで段々と近づいて行く地面にも待ったをかけたかった。
「…?」
地面にダイブするダメージなんてものはひとつもなく、代わりに、抱きしめられた温もりに脳が停止した。
「君、大丈夫?」
「え…?」
心配するように顔をのぞきこんできた男の声は、間違いなく扉越しに聞いたヤクザらしき男の声だった。
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