雨降る午後二時、小さなカフェで

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軒下で空を見上げていると扉が開いた。 「よかったら雨宿りしていきませんか?」 出会った時と同じ言葉を彼女が私に投げ掛ける。 「ご厚意感謝します。ですが、ここまで濡れていては店内を汚してしまいます。軒下だけ貸して頂ければ結構です」 私も初めてこの軒下に滑り込んだ時と同じ言葉を返すと「ふふふ」と笑い合った。 あの時と同じ様に手渡されたタオルで身体を拭っていると「どうぞ」と湯気が立つミルク珈琲を出してくれた。 両手でマイセンの双剣が描かれたカップを持ち上げる。温かくて泣きはらした眼もささくれだった気持ちも解れていくように感じた。 少し落ち着くと私は昨夜の彼とのやり取りを 洗いざらい彼女に話した。 彼女は「うん、うん」と相づちを打ちつつ、優しい微笑みを向けるとまた寂しそうに軒下へ目をやった。 「会いたいと思った時に、会える場所に会いたい方がいて、会いに行ける。この上ない幸せよね」 軒下から私へ戻した視線は今にも泣きそうだった。 「なぜ?会いに行かないのですか?昔、ある方が仰っていたの。会える機会があるのに会いにいかないのは、己の愛も相手の愛も信じていないからだと。増悪に変わる己の心が怖いからだと。千景さんもそうではないの?離れている時間が長いとお互いの気持ちも行動も変化をするでしょう?その変化を受け入れる事が怖いと思ってしまうのではないの。それは後悔となる。会えるのに会わない行動は後悔しか生まないわ。そしてその後悔は永遠の心残りとなって旅立つことができなくなる」 彼女はそう言うと軒下に手を伸ばした。
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