雨降る午後二時、小さなカフェで

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バンッ!!! 勢いよく扉が開いて私は椅子から飛び上がった。 はぁはぁと息を切らした見覚えのある顔が私を見つけると「よかった」と安堵の溜息を漏らした。 どこで会った人だったかと黙って見つめているとツカツカと店内に入ってきた。 「千景っ!お前、スマホの電源まで落とすなっ!どれだけ心配したと思ってるんだっ!」 ぎゅっと私を抱きしめたのは彼だった。 「よかったっ!あんな風に大声を上げて泣き叫ぶ千景は初めてだったから。あのまま、どこかへ消えてしまうのじゃないかと思った」 「・・・・えっ?れ、礼二?なんで・・・・ここに・・・・」 「休暇取ったんだ。驚かせようと思って黙ってた。昨日の電話でこれから日本に向かうと言おとしたら・・・・嫉妬した。千景が俺より彼女の事を大切に思っている様に感じて。みっともなくてごめん」 彼の声が震えている。視界が歪んだ。あれだけ泣いたのにまた涙が溢れてくる。それでも今度の涙は嬉し涙だ。 だって、彼も同じように私に素直になれなかっただけだと解ったから。今度は彼の胸に顔をうずめて泣いた。 「もう、目がパンパンで開かない・・・・」 「俺のせいなの?」 「そうよ。全部、礼二のせいなの!」 言葉とは裏腹に彼の腕に絡みつく。駅までの道のりがこんなに心地よく感じるのは初めてだった。 彼女は私達に「よかったですね。会いたい時に会いたい人に会えた幸せを嚙みしめて下さいね。これからもずっと」 そう言うと「そろそろ閉店です」と送り出された。 彼は久しぶりの休暇と日本での仕事で二週間程、滞在した。しかも私の家に。 彼がNYに赴任してからこんなに長い時間を共に過ごすのは久しぶりだった。仕事のこと、将来のこと、離れていた三年間のお互いの気持ち、これからどうしていきたいかなどなど。 遜色することもなく、ありのまま、全てをお互いがお互いを前に包み隠さず打ち明けた。 どうやら双方が双方を慮るばかりに臆病になっていた様だ。 私はこの時した決断を彼に告げた。一年後に退職して、NYに行く。 「会いたいと思った時に、会える場所に会いたい方がいて、会いに行ける。この上ない幸せよね」 彼女の言葉が脳裏でこだました。
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