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社長がズレた眼鏡を直したのを見て、我に返った。
赤子を背負っていれば、子持ちに間違われてもおかしくない。
しかもそれくらいで社長に平手打ちを食らわせてしまうなんて。
「あっ、す、すみません……!」
とりあえず、頭を下げて謝った。
しかしこの状況、どう回収していいのかわからない。
必死で頭を回していたら、頭上からため息が降ってきた。
「とりあえず部屋、入れてもらえるか?
視線が痛い」
「あっ、そう……ですね」
曖昧に笑い、社長を部屋へ上げる。
私の叫び声で、他の部屋の人が出てきていた。
「ひとりじゃなかったのか」
望の顔を見て、御子神社長が驚いた声を上げる。
「だから。
私の子供じゃないですって。
弟と妹です」
「ふーん、こんな年の離れた弟妹がいたのか」
興味なさげに言い、テーブルを挟んで望の前に社長が座る。
望は知らない人の登場で、怯えたように私の後ろに隠れた。
「さやねぇちゃん、この人だあれ?」
「んー、お姉ちゃんの会社の人」
望は人見知りが激しいのだ。
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