第一章 令嬢秘書の正体

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社長がズレた眼鏡を直したのを見て、我に返った。 赤子を背負っていれば、子持ちに間違われてもおかしくない。 しかもそれくらいで社長に平手打ちを食らわせてしまうなんて。 「あっ、す、すみません……!」 とりあえず、頭を下げて謝った。 しかしこの状況、どう回収していいのかわからない。 必死で頭を回していたら、頭上からため息が降ってきた。 「とりあえず部屋、入れてもらえるか? 視線が痛い」 「あっ、そう……ですね」 曖昧に笑い、社長を部屋へ上げる。 私の叫び声で、他の部屋の人が出てきていた。 「ひとりじゃなかったのか」 望の顔を見て、御子神社長が驚いた声を上げる。 「だから。 私の子供じゃないですって。 弟と妹です」 「ふーん、こんな年の離れた弟妹がいたのか」 興味なさげに言い、テーブルを挟んで望の前に社長が座る。 望は知らない人の登場で、怯えたように私の後ろに隠れた。 「さやねぇちゃん、この人だあれ?」 「んー、お姉ちゃんの会社の人」 望は人見知りが激しいのだ。
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