第一章 令嬢秘書の正体

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「もう、御子神社長と河守さんてお似合いのふたりよね」 ……などと見られ、噂されていた。 「それから。 ……少し、顔色が悪いぞ。 調子が悪いんじゃないか」 急に足を止めた社長が、振り返って私の顔をのぞき込む。 そのかけている眼鏡の向こうを、ついまじまじと見ていた。 「いたって通常どおりですが」 とか答えつつも、昨晩はとある事情で少々寝不足だった。 誰にも悟られていないのに、御子神社長は気づくなんて。 「なら、いいが。 清子に倒れられると困るからな。 無理をするなよ」 指先で軽く私の額を弾いた瞬間、周囲から小さな悲鳴が上がった。 僅かに痛む額を少しだけ押さえ、再び歩きだした彼を追う。 ……ああいうのがいいんだ。 悲鳴の意味はわかっていたが、これがそれほどまでのこととは私にはまったく理解できなかった。 私、河守清子はLCC航空会社、『チェリーエアライン』で社長付の秘書をしている。 上司であり社長の御子神彪夏(ひゅうが)さんは、親会社である『桜花(おうか)ホールディングス』社長の息子だったりする。
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