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「もう、御子神社長と河守さんてお似合いのふたりよね」
……などと見られ、噂されていた。
「それから。
……少し、顔色が悪いぞ。
調子が悪いんじゃないか」
急に足を止めた社長が、振り返って私の顔をのぞき込む。
そのかけている眼鏡の向こうを、ついまじまじと見ていた。
「いたって通常どおりですが」
とか答えつつも、昨晩はとある事情で少々寝不足だった。
誰にも悟られていないのに、御子神社長は気づくなんて。
「なら、いいが。
清子に倒れられると困るからな。
無理をするなよ」
指先で軽く私の額を弾いた瞬間、周囲から小さな悲鳴が上がった。
僅かに痛む額を少しだけ押さえ、再び歩きだした彼を追う。
……ああいうのがいいんだ。
悲鳴の意味はわかっていたが、これがそれほどまでのこととは私にはまったく理解できなかった。
私、河守清子はLCC航空会社、『チェリーエアライン』で社長付の秘書をしている。
上司であり社長の御子神彪夏さんは、親会社である『桜花ホールディングス』社長の息子だったりする。
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