第一章 令嬢秘書の正体

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ちなみに桜花ホールディングスとは、国内第二位の『桜花航空』を中心とした企業グループだ。 今日は訪問先から直帰だった。 「どこかで食事して帰るか」 普通は秘書か、お抱えの運転手が運転するところなんだろうが、御子神社長は大抵自分で運転する。 運転自体が好きなんだそうだ。 「よろしいんですか」 「ああ。 清子はちゃんと食事してるのか心配になるほど細いからな。 いっぱい食べさせて太らせないといけない」 意味深に私側の目を社長がつぶってみせる。 それにどきどきしたかといえば、食費が浮いて助かるなくらいしか考えていなかった。 御子神社長が連れてきてくれたのは、天ぷら屋だった。 正直に言えばフレンチがいいが、奢ってもらうんだから文句は言わない。 サクサク揚げたて天ぷらをつまみに、日本酒を飲む。 「うまいか?」 「はい、美味しいです」 眼鏡の向こうでうっとりと目を細め、さらにお猪口へ社長がお酒を注いでくれる。 「そうか。 ならよかった」 ふふっと嬉しそうに小さく笑い、御子神社長がお猪口を口に運ぶ。
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