第一章 令嬢秘書の正体

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……これはヤってしまったってヤツですか? しかし、いくら考えても記憶がまったくない。 あれって、……わからないものなんだろうか。 けれど、経験のない私がいくら考えようと、わかるわけがないのだ。 悩むだけ無駄なのでそろりとベッドを出て、服を探す。 それはきちんとハンガーに通し、近くの扉にかけてあった。 そういうのはやはり、育ちなんだろうか。 手早く着替え、社長を起こさないように部屋を出た。 リビングは何度か来た見覚えのある場所で、やはりここは御子神社長のマンションらしい。 ソファーの上に置いてあったバッグを掴み、部屋を出る。 あとのことは今考えない。 今日明日は休日だし、二日休みを挟めば忘れてくれる……とかはないか。 駅から十五分歩いて古い二階建てアパートが見えてくる。 その一階の角部屋が私の住んでいる部屋だ。 ――そう。 会社ではご令嬢などと噂されている私だが、実は〝超〟がつく貧乏。 会社でのあれは周囲の期待に応えて、そう演じているだけなのだ。 「えっ、あっ、あれ? 鍵が、ない」
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