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部屋の前で鞄の中を探るがいくら探しても鍵が見つからない。
どこかで落とした?
どうしよう。
「清ねぇ、朝帰りかよ」
焦っていたら中からドアが開いた。
顔を出した一番上の弟、健太が呆れ気味にため息を落とす。
健太には……というか、実家には合い鍵を渡してある。
「あっ、えっと、ほら、姉ちゃんだって一応、大人だしぃ?」
言い訳をしながら、十も年下の弟相手に語尾が不自然に裏返る。
「まあ、いいけどよ。
それにそのほうが返って安心するし」
高校生の弟に朝帰りを咎められるどころか安心されるって、私ってどういう姉なんだ?
部屋の中では一番下の妹がすやすやと眠っており、横ではその上の弟が絵を描いていた。
「悪いけど清ねぇ、望と美妃、預かっててくれない?
母さん、風邪気味みたいだから休ませたいし」
「了解」
健太がインスタントコーヒーを入れて渡してくれる。
本当によくできた弟だ。
義母の真由さんは身体があまり強くなく、季節の変わり目などはよく体調を崩していた。
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