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第一章 令嬢秘書の正体
「清子。
明日のゴルフ、キャンセルお願いできるか」
「はい、承知いたしました」
二歩前を歩く御子神社長に返事をし、頭の中に言われたことを書き留める。
「御子神社長と河守さんよ」
「河守さん、今日もお美しい」
社内を私たちふたりが歩けば、視線を集めた。
まあそれも、仕方ないと思う。
少し前にある御子神社長の顔をちらり。
軽くパーマをかけてラフに掻き上げたビジネスショート。
細面な顔には切れ長な目がよくあっている。
さらに黒メタルの縁なし眼鏡がその顔面偏差値を爆上がりさせていた。
しかもスーツが彼のために作られたものかのように似合っている。
細身ではあるが、ほどよく筋肉のついたしなやかな身体なのは知っていた。
そんな彼が、女子スタッフの憧れの的なのは当たり前だろう。
一方の私はといえば、長い茶髪を僅かに甘さを感じさせるお団子にし、薄いピンクのスーツ姿。
メイクは薄く、ナチュラルに見えるように。
他人からは。
「河守さん、どこかのご令嬢って噂、本当なのかな?」
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