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 (セイギ)と出会ったのは、私がちょうど34人目の彼氏を殺した帰り道のことだった。  別に浮気はしていなかったし、殺す気は全然無かったけど、私に黙って合コンに参加したと言うから殺した。    優しい彼の事だ、友人に誘われて仕方なくいったのかもしれないけれど、私の事を思えば参加しようなんて思わない筈だ。  それなのに、私に一言も告げず、勝手に参加するのはどういう事だろう?     問い詰めると、苛立った様子で「面倒臭いんだよお前」と逆ギレしてきた。     だから殺した。  私に合わせられない時点で、殺されても仕方がない。  死体はいつもの公園に遺棄した。  私は泣きながら、そして土砂降りの雨にうたれながら、道を歩いた。  殺す度に苛まれる虚無感と、ちょっとの罪悪感を引きずって。  ──また殺しちゃった。なんで上手くいかないんだろう?  そう思いながら私は、彼との出会いから何までを消し去るように、その場を駆け出した。  早く帰って、早く寝よう。そして早く彼の事なんか忘れよう。これまで殺して来た、33人の元カレと同じように。  そんな想いの中、前も見ずに走っていると、傘を指す一人の男性とぶつかり、その場で転んでしまう。 「痛っ……!」 「あっ、すみません。大丈夫ですか?」 「だ、大丈夫です。此方こそすみません、ぶつかってしまって……」  私はぶつかった人に頭を下げ、早々にその場から立ち去ろうとする。  泣いてる所を見られたくないし、思いっきり転んで少し恥ずかしかった。  それに今、誰にも会いたくないし、話したくもなかった私は、その場から逃げ出すように、彼の隣を横切る。 「待って。君、紫 綾女(ムラサキ アヤメ)さん、だよね? 何かあったの? 泣いてるみたいだけど」 「え……?」  名前を呼ばれて、思わず振り向く。  心配そうな瞳で此方を覗き込んでくる彼の正体に気付いたのは、その時だった。        
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