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アーク王子が17歳の誕生日を前にして父王の仇を取るため名乗りをあげたとき、アメリアはペリクレス家へ預けられた。その後、サジュームが度々理由をつけてはペリクレス領に戻ってきていたのも、アメリア可愛さのためだったのは明らかだった。
サジュームはアナトリア半島で屈指の魔法使いであり、アメリアはその彼の魔法の弟子でもあった。そのサジュームに「魔力は私をはるかに越えている」と言わしめた。「氷の賢者」と呼ばれるサジュームを超える魔力は、災害時の土砂の撤去や木材の伐採時に大いに活用されたが、兵士数百人分とも言える巨大な力はペリクレス領内でのみ内密に使用された。アメリア自身の価値を他者に知らしめないという方針は、アメリアを守るためのペリクレス家の総意であった。
プハラ山脈の空が夕日で赤く染まるころ、サジューム一行はペリクレス城に到着した。領主のトニとその妻のコーネリアが出迎えてくれて、ダルトンは両親である二人と抱擁していた。
サジュームは、挨拶もそこそこにエントランスに3人を残して、ブルーノの寝室に向かった。
「後で執務室に来てくれ」
階段を上るサジュームの背中にトニは声をかけた。
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