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部屋を覗くと、ブルーノは意識を回復していた。枕に頭を付けたまま、ドアの方に顔を向けている。
「戻りました。お加減はいかがですか?」
サジュームがそばまで近づいてそっと囁くと、
「…つまらないことになった」
と呟いた。
先王と先々王の二代に渡って、アナトリア王国の国境を守ってきた屈強な戦士であるブルーノも、肉体の衰えにはかなわないようだった。
「まぁいい。病のお陰で息子が久々に顔を見せてくれた」
「何を言っているんです。病でなくとも、来ますとも」
ブルーノが柄でもないことを言うので、サジュームが驚いていると、
「お前こそ、顔色が悪い」
と視線をサジュームに向けてくる。
(この目は健在だな…)
サジュームは、なんでも見通しそうなその目から顔をそらした。
「どうだ、その後は…」
サジュームがブルーノに会えば、最初に問われることはアメリアのことだった。
「いくつか魔法使いの話は入ってきていますが、まだ確認がとれていません…」
サジュームはベッドに腰掛けると、視線を遠くに向けた。
「そうか…。お前も難儀だな」
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