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サジュームは、間違えないように慎重に言葉を選んだ。
「私は、その娘をこよなく愛し、彼女の幸福を切に願う者です。彼女の憂いは私の憂い。彼女があなたに会って何を知ったのかで、彼女の背負うものが何かを理解したいと思っています」
サジュームの言葉を聞いて、白衣の女性は「背負うもの?」と訊き返した。
「あなたにも、その娘と同様に別の人物がそばに見えます。黒髪でこのような装飾具を顔に付けている女性が見えます」
サジュームは、親指と人差し指で輪を作りそれを目にあてて覗き見るようなそぶりをして見せた。彼は、白衣の女性を見つけたときから、そばに別の人物が見えていた。
その言葉を聞いて、白衣の女性の表情が変わった。目を見開き、信じられないと言った顔をしたがすぐに合点がいったように、
「それが、背負うものという意味?」
と訊いていた。
「それだけではないと思っていますが、陰のようにそばに張り付くその人物が、あなた方の超人的な知識や能力に関わっていると考えています」
とサジュームが言うと、白衣の女性は小さくため息をついて
「あなたがおっしゃったとおり、私がメリア・ヨーコ・アルジュ男爵です。そう、あなたの前に一人の娘がここに侵入しました」
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