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導師はひたと視線をサジュームに向けたまま、
「あなたにとって、その娘が大切なのは分かりますが、その子と私の会話の内容はお伝えできません。それは私たち二人のものだからです」
「では、その娘は何と名乗りましたか?『アメリア』ですか。『レイナ』ですか?それとも『ミウ』?」
そうサジュームが名を挙げると、導師は目元を緩ませた。
「その全てです。そこまで辿り着いているんですね」
「彼女が複数の名を持つのは、あなたが『メリア』であ『ヨーコ』であり『アルジュ男爵』であることと関係があると思いますか?」
「…あるでしょうね」
サジュームは、隙をみせた導師の心に入り込もうとすかさず質問した。
「話は変わって、あなたは『精霊』の存在を信じますか?」
「精霊伝説ですね。精霊の宿りし人間は、その地に大いなる恵を与えるという…」
「あなたのそばにいる、その人物が精霊なんでしょうか?」
「これは、精霊ではありません。ですが、見える人がこれを精霊と言いたい気持ちは分かります」
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