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「どうでしょう…。私には、前世の記憶などありませんが」
とサジュームが言うと、
「忘れているだけで、案外、お前も前世でアメリアに会っているかもよ」
とガイウスが言った。
「どうしたんです?ガイウス。あなたらしくないことを言いますね」
とサジュームが驚くと
「少し浮かれているんだ、ガイは。まったく、私を差し置いて結婚するなど…」
とアークがふてくされて言った。
「ええ?それは、めでたい!リリアナ嬢は、お元気になられたということでしょうか?」
「まぁ」
相手の名が出て、ガイウスの顔が緩んだ。
「それは良かった。おめでとうございます」
ガイウスの想い人が健康不良と聞いていたので、サジュームは安堵とともに祝福した。
ほんの数年前、ガイウスは長年の国内の混乱の果てに、かつての恋人であったリリアナと再会した。ガイウスは、長年の闘争の間、心に決めた人がいるという素振りは一度も見せたことがなかった。私事を捨てて、アークにその身を捧げてきた男だった。
「その話は、また後でな」
とガイウスは照れた顔で言うので、こんな強面が照れるとはとサジュームは呆れつつ、また羨ましくも思うのだった。
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