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「あの子がことさら朗らかだったのは、演技だったのか?」
とアークが信じられないと、いった顔で言うと、
「演技、というよりは、あの子の優しさだったのでしょう。当時、我々は追い詰められていましたから。深刻にならないように気を遣っていたのでは?」
とガイウスが言った。
サジュームも「気を遣う」という言葉が、ぴったりだと思った。寄る辺もないアークとサジュームとガイウスの気持ちを考えて、アメリアは気を遣ってくれていたのだと思った。
「とにかく、リアの気持ちはリアに訊かねば分からないということだな…。我々は引き続き、リアを探し、見つけ出さねばならない。他の勢力に取り込まれる前に…」
と言うアークの言葉にサジュームとガイウスは頷いた。
「そろそろ時間だ。私は行くが…。ガイウス、セストのことをサジュームに説明しておいてくれ」
とアークは席を立って、タペストリーの奥に消えて行った。その顔は、一瞬苦し気に見えたがそれはすぐに消えて、端正な王の顔になって暗い隠し通路を駆けた。
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