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1 帰郷
森の木々が色付き、秋の気配が濃くなったある日、サジューム・ペリクレスは甥のダルトン・ペリクレスを含む数人の供を連れて街道を馬で駆けていた。
すでにペリクレス辺境伯の領地に入っており、このまま駆け続けていけば夜には城に着くはずだった。
サジュームの父、前ペリクレス辺境伯であるブルーノが倒れたとの知らせを受けて、サジュームはダルトンとともにペリクレス領出身の配下の人間を連れて故郷に帰っているところだった。
王宮で主席王宮魔法使いとして出仕している魔法使い達をまとめつつ、国内外の折衝に忙殺されているサジュームは、いつ寝ているのかというほど働いている。この度の帰省も、ダルトンが馬車を提案するも「急ぐから」との理由で、馬で駆けている。いつ彼がうたた寝をして馬から落ちるのではないかと思いながら、ダルトンはハラハラしていたのだった。
そこまでダルトンが心配するほどサジュームが働くのには、訳があった。
2年前の「セデス海戦」の時、一人の少女が行方不明になった。国内外からその少女の行方の情報を集めるため、あえて折衝や交渉の仕事を受けているのをダルトンは知っている。
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