14歳のバースデー

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俺は引っ越しの用意をする最中、李実が使っていた引き出し付きの勉強机からこんな物が出てきた。それは薄い一冊の封筒。宛名にはお兄ちゃんへと書かれていた。俺はその封を開けて読み始める。 『お兄ちゃんへ 元気、じゃないよね?だってお兄ちゃんがこの手紙を読んでる頃には私、この世にはいないんだもんね。実は自分が亡くなってしまうことは知っていたんだ。 この前、夜中にトイレに行っていたら父さんの独り言を聞いたの。「だんだんお金がなくなってきた。李実を殺すしかないか」って。 それから父さんのこと、怖くなっていたの。でもね、誰かに殺されるなら死んでもいいっていつの間にか思っちゃってたんだよね。私って、本当にバカ。 それに、今の学校での生活は本当に楽しかったし、何よりまたお兄ちゃんとクラスが一緒になれたのが嬉しかったよ。だから私は幸せものなんだ。今までありがとう。 最後に一つだけお願いがあるの。私が亡くなったら母はお兄ちゃんと一緒に祖母のところへ行くと思うの。だからその先で私のクラスメイト、千代雪美ちゃんを救ってあげて。方法はお兄ちゃんに任せる。もし、今でも虐めが続いていたらの話だけどね。その人のこと、よろしくね。 今までありがとう。李実のこと、忘れないでね。さようなら。李実より』 俺はその手紙を読みながらいつの間にか泣いていた。それもそうだろう。 一番驚いたのは李実自身も自分が亡くなることを知っていたことだ。 きっとこの手紙というより遺書は、父の独り言を聞いた日に書いたんだろうなって読みながら察した。 これから俺がしなければいけないことは千代雪美っていう人を助けること。李実の正義感の強さ、俺が出せるのかわかんねぇけどやってみるよ。ありがとう。
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