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何回目の転校生
五月上旬。俺は転校生としてこの学校に来た。
正直、最初は雪美という人と同じクラスになれなかったらどうやって助けようって不安に思ってた。
実際、同じクラスだったとしても、いじめを止められるかどうかわからない。
でも、やるしかない。俺が李実の正義感を継ぐのだから。
先生に呼ばれて教室に入れば、誰もが俺に視線を集めてきて、緊張が高まる。もう転校生は慣れているはずなのに、なんでまだ緊張するのだろう。
自己紹介の言葉を言いながら教室を見渡して見れば、その中に一際目立つ存在があった。真ん中の列の一番後ろの席。ポニーテールの女子が必死に何かを消しゴムで消していた。
「じゃあ、席は千代さんの隣ね」
俺はその一言に目を見開いた。
千代?もしかして李実が言っていた人って…
俺は気になって咄嗟に下の名前を聞いた。
すると、彼女は使い古した筆箱の中からメモ帳を取り出した。そして何かを書いて俺に差し出してきた。
『雪美』
メモ帳にはそう書いてあった。
やっぱり君が雪美なんだ。顔を見てみると、口元のあたりにほくろがあって前髪はもう少しで目が全部隠れそうなくらい長かった。
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