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「ああ。ボブでメガネかけてる人だね。懐かしいな。あの子、僕と友達だったんだ」
俺は今まで、李実の交友関係に関しては一度も触れたことがなかった。李実からも話そうとしてこなかったし、俺も気にしたことがなかったからだ。だからこの話を聞いたのは初めてだ。
「へ?そうだったんだ。俺の妹がお世話になりました」
もういないことに変わりはないけど、少しでも関わってくれたのならお礼を言わないとな。
「そういや、今は元気?その妹さん」
やっぱり聞きたくなるよな。伝えなきゃ。俺は意を決して口を開く。
「もう、いないんだ。この世には。父に殺されて」
口にすればまた李実との思い出が頭に蘇ってきて今にも涙が出そう。
「えっ!?父が娘を殺すことなんかあんの?」
里喜は信じられないとでも言うような顔をしている。それもそのはず。こんな話はめったに聞かないしな。
「あるんだよ。俺の父は最低な人だから」
ああ。俺の父は最低な人。迷惑しかかけてないのに平然としていて俺達、家族には謝ってきたことは一度もない無責任な父。
「なんか、悲しいこと話しちゃったな。ごめん」
里喜は寂しい顔をしてそう言った。
「謝るなよ。悪いのは俺の父だし」
俺はフォローするつもりでその言葉を言った。
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