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14歳のバースデー
三年後の四月下旬。中二も始まってまだ間もない頃。その日は李実の十四才のバースデーだった。
家族でパーティーをあげてたくさん話をした。
俺は李実に用意した、大人っぽい茶色い腕時計をプレゼントとして渡した。喜んでくれたけどあとで高かったんでしょ?って迫られた。
確かにその腕時計の値段は八百円ぐらいした。腕時計としてはまだ安い方かもしれないが、俺にとっては充分高い。
パーティーが終わってその夜中。十二時ぐらいだろうか。俺は急に目が覚めてトイレへ行った。その帰り。リビングにいた母からこんな声が聞こえた。
「もう、二人も養うためのお金がないわ」
向かいには父も座っている。
これは聞いたらいけない。父と母の問題だしおそらく俺は関係してないだろう。と思いながらも気づけば廊下から耳を済ましていた。
「あなたのせいよ。本当にいい加減にしてよ。引っ越しってお金がかかるのよ」
どうやら母は父が何回も転勤することに腹をたてているらしい。実際、このことに関しては誰が怒ってきてもおかしくはない。俺自身もいったいいつまで転校ばかりになるんだろうとうんざりしていた。
「わーった、わーったって。なんとかしてみるよ」
父はめんどくさそうに母に返した。家族の金銭面という深刻な話なのに、そんな気の抜けたような返事でよいのだろうか。いや、よくない。
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