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自分の声が頭に響いて痛みが増したけれど、構わず続ける。
俺の中の不安だった思いを一気に、緋彩先輩へ打ち明けた。
「俺、あの時、先輩に目を逸らされて……きっと嫌われてしまったんだと思いました。……霧江達に無理矢理されてるのに、感じてしまっていたのは事実ですから。
それに、霧江に……せ、先輩を裏切るような行為をしました。こんな俺が、もう好かれるはずないって思って……!」
「俺が、君を嫌うなんてことは無いよ。うみっちのこと、今も変わらず大好きだから。
それは、この先もなんだにゃあ~。どうか、信じてほしい。」
「緋彩先輩……。」
先輩はふわりと包み込むような優しい笑顔で、優しい手で、俺の頭をそっと撫でてくれた。
つい、ほっとした反動で、ぶわっと涙が溢れてきて止まらなかった。
情けない泣き声で、先輩に感情を吐露する。
「よ、良かったぁ……。俺、もう駄目かと……。
うぅ、先輩に嫌われてしまったら、……もう、生きていけないって思って……。」
「……っ!
君を不安にさせて、ごめんね。……それと、嬉しい言葉をありがとう。
うみっちの気持ちがちゃんと聞けて、良かったにゃあ。」
緋彩先輩はそう言って微笑んで、俺の頭を優しく撫で続けるのだった。
俺が泣き止むと、もう少しの間、安静にするよう先輩から言われる。
それから部屋を出ていこうとする彼を不安げにじぃっと見つめていると、俺を安心させるように理由を教えてくれた。
「君の食事を用意しに行くね。勿論、そこにあるボタンで何時でも気兼ねなく呼んでくれていいよ?
その時は、大喜びでうみっちの元に駆けつけるからにゃあ~。」
「ありがとうございます。……さ、寂しくなったら、そのっ……押すかもしれません。」
「うん!ふふ、少しずつ甘えられるようになってきたね。とっても、嬉しいんだにゃあ~。」
「……?」
俺は、先輩の言った意味を全て理解することは出来なかったけれど、彼の嬉々とした様子を見て、何だかすごく心がぽかぽかした。
緋彩先輩は俺に小さく手を振ってから、部屋の扉を静かに閉める。
先輩の足音が、遠のいていく。
静かな部屋の中で、言われた通り目を閉じて、身体を休める。
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