御曹司

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 「ったく。佐々木のやつ、ふざけたこと言いやがって」  「佐々木……さん?」  「ん? ああ。そのボンボン佐々木隼人っていうんだ」  間違いない。このところ里帆がしきりに考えてしまっている彼だ。  佐々木さん……。やっぱり、私たち夫婦に問題があるんじゃないか疑っているんだ。  暴力は受けてないってこの前言ったけど……。  広高が危険人物だと思われたら、今後の夫の人生が、惨めなものになる可能性がある。  昇格も出世も出来ないかもしれない。プライドが高い夫にとって、それは耐えがたい屈辱だろう。  何せ佐々木は、御曹司——次期社長なのだ。  そんな人に、人間性を疑われてるこの状況は、非常に良くない。  何とかしないと。  何とかして——広高の悪いイメージを、払拭しないといけない。  そのために、佐々木さんに会ってみなければ。
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