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里帆は、しばらくの間、広高がいかに良い人間であるかを、懇切丁寧に佐々木に説明した。
しかし、家庭での彼の様子は、お世辞にも褒められるものではない。
なので里帆は、結婚前——まだ優しく魅力的に映っていた頃の広高を思い出して、それが現在まで続いているように、佐々木に話して聞かせた。
「夫は、私を大切にしてくれているんです。この前は、私の曖昧な態度のせいで、誤解を与えてしまったようで、すみません」
嘘をついている罪悪感に苛まれながらも、里帆は言い切った。
しかし、佐々木は里帆の言葉を、まったく信用できなかった。
彼女の説明は、ところどころ辿々しく、一生懸命に取り繕っている感じが、否めなかった。正直者な里帆は、嘘が上手につけなかったのだ。それ故に、佐々木はより里帆がいじらしく、守るべき存在に思えた。
同時に、里帆の夫に対する怒りも、ムクムクと沸き上がってきた。
好いた女性を救いたい。佐々木はその一心で、諭すように里帆に言う。
「これ以上自分の気持ちに目を背けるのは、よしてください」
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