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モラハラ夫と言い争い
「離婚したい? 何言ってんだ、お前」
夫が開口一番に言ったのは、そんな言葉だった。
「理由は何だ? ——ああ、わかった。男が出来たんだろ。ったく。暇ができると、ろくなことをしないな。人が働いている間に、お前は優雅に不倫か」
自分に非があるとは、一ミリも思わないようだ。
夫は調子づいて、ベラベラと口を動かす。
「そもそもお前みたいなやつ、本気で相手にしてくれる男なんていないだろ。遊ばれてんのに気付かないとか、マジで哀れだな。馬鹿すぎて笑えてくるわ」
何かが切れる音がした。
「佐々木さんは、そんな最低な人じゃない! あなたみたいなモラハラ男とは、大違いよ!」
「あぁ?」
声を低くした広高は立ち上がり、里帆を見下した。そして、その華奢な肩をガッと掴む。
「痛ッ……」
「お前舐めてんじゃねえぞ」
爪が肉に食い込んで辛い。里帆は、痛みに歯を食いしばる。
「誰に口きいてると思ってんだ! モラハラ? 便利な言葉だよな、それ! 言葉の暴力とか心の傷とか! お前がちゃんとしてないから、こっちは注意してやってんのに、それをただの暴言扱いか! 勝手に苦しんで、被害者意識持ちやがって。この糞女が!」
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