薔薇色だった日々

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薔薇色だった日々

 夫の出勤を見送った後。里帆はぐったりとテーブルに体を投げ出していた。  夫が出ていってすぐに、しばらくこうやって思いっきりだらけるのが、彼女の習慣になっていた。  結婚当初は、少しでも時間が遅く流れるように。夫が出勤しなければいけない時が来ませんように、と可愛い願いを持っていたのに、今じゃ早く出ていってほしい、と一心に思うようになっている。  三年の間に、二人の関係はすっかり変わってしまった。  まだ恋人同士だった頃の広高は、優しくて失敗だって笑い飛ばしてくれて……怒ることなんて滅多になかったのに。喧嘩になった時も、大体広高が先に謝ってきた。  亭主関白なタイプには、微塵も思えなかった。  悲しいのはそれだけじゃない。  この頃、彼から愛を感じられないことが、里帆の一番の悩みだった。  やることはやっているが、そこに甘さなどなく、溜まったものを処理している、という感じなのだ。  行為中、里帆は早く終わらないかな、と黙って天井のシミを眺めている。その時間が、里帆には永遠に感じるのだった。  夫はいつも突然求めてくる。こちらの事情などお構いなしに。  そうして事が済んだら、さっさと眠ってしまう。服を着たままするので、少しズボンを上げ直せば即眠りに入れる。  里帆は全裸になるように言われるので、毎回だるい体を持ち上げて着替え直す。夫の安眠を妨げないように、気を遣いながら。
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