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「スペックなんて、関係ない! 私は、彼の優しさに惹かれたの!」
「あ?」
瞬間、広高の顔色が、物凄いほど真っ青になった。
まずい。何がそんなに広高の逆鱗に触れたのかわからないながらも、里帆は危機を察知した。
ブルブルと震える夫の口から、罵倒が溢れ出す前に、この場を離れなければ! と里帆は強く思った。
目にも留まらぬ速さで、里帆は屋外へと飛び出した。
振り返らず、ひたすらに足を動かす。あのゾッとする顔に追いかけられているかもしれない、と思うと、怖くて後ろを向けないというのもあったが、恐怖心以外の何か——どこか達成感にも似た愉快な気持ちが、里帆の原動力になっていた。
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