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「こんばんは」
背後からした声に、里帆の体がはねる。
閑散とした夜道で急に挨拶されたら、誰であってもそのような反応をするだろう。しかし、里帆の驚きは単にそれだけではなかった。
「佐々木さん……」
そこにいたのは、数秒前まで通話していた彼だった。
「うちのレオが吠えたので、もしかしたら……って思いました。4階建ての家なんて、なかなかありませんからね」
「ということは、ここが佐々木さんの家なんですか?」
こんな偶然あるのか。無我夢中になってたどり着いた先が、焦がれていた彼の家の前だったなんて。
「何か、運命感じちゃいますね」
佐々木が、照れくさそうに頭をかきながら、言う。
運命。その言葉に、里帆の心臓がドクンと高鳴った。
彼は私の運命だ。年甲斐もなく、里帆はそう思った。
こんなドラマみたいなことが、自分の身に降りかかれば、そう感じても不思議ではない。まして彼女は、恋の魔力にかかっているのだ。
佐々木と目が合い、里帆は体がカッと熱くなった。
次の瞬間、彼女は何とも大胆な行動に出ていた。
佐々木に駆け寄って、その体に抱きついたのだ。
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