夫からの鬼電

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夫からの鬼電

 キスが終わり、互いの熱がある程度引くと、いつまでも屋外にいるわけにはいかない、となる。  そこで里帆は、佐々木の家にお邪魔させてもらう運びとなった。  「僕は基本的に、一人暮らしなんです。唯一の肉親である父がしょっちゅう出張に行っているので。あ、レオがいますけどね」  「ゴールデンレトリバーですか……利口そうな犬ですね」  この家の愛犬であるレオは、里帆がお客さんだと察すると、すぐに愛想の良い態度を見せてくれた。躾が行き届いているのだとわかる。  レオの愛らしさに癒されていると、けたたましい着信音が鳴り響いた。  笑顔のまま、固まる。  夫からだ。いつまでも帰ってこない私に、しびれを切らしたんだろう。  どうしよう、出たくない。でも、ここで出なければ、後が酷い——。  苦悩する彼女の肩に、優しい手がかかる。  「僕が出ます。少し考えがあるんです」  ニッコリと頷く彼。自信ありげなその様子に、元気付けられて、おとなしく携帯を渡す。  「はい」  「おい! 一体どこにいるんだ! お前が行きそうなところを、しらみ潰しに探してみても、全然見つかんねぇんだけど……って、お前里帆じゃないな?」  「そうです。いつもそんなふうに、里帆さんを口汚く罵っているんですね、広高君」
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