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それからあれよあれよという間に、彼は長座布団の上に寝かせられた。
快適な室内環境に彼の体は喜んだ。意識が完全に落ちるのを、防ぐことはできなかった。
無事に食品を冷蔵庫にしまえた里帆は、ホッと息をついた。
良かった、これで夫に怒られないで済む——。
気持ちが落ち着いたら、思考力が戻ってきた。
里帆は、自分の問題行動が、だんだん怖くなってきた。
体調不良だったからといって、見知らぬ男性を現在自分一人だけの家にあげるなんて、危険な行いだ。
それに、自分に断りなく他人を家に入れたと夫に知られたら……今までの比にならない暴言を並べ立てられるはずだ。
何で私、そんなことしちゃったんだろう。
座布団を敷き布団にして眠る彼を、そっと様子見する。
顔色はだいぶ良くなってきたけど……やっぱりまだ苦しそうだな。脂汗が浮かんでる。
おでこに手を当ててみる。
熱はないみたい。じゃあ貧血かな? 私もたまになる。あれ辛いんだよね。以前夫にそれを伝えたら、「甘えるな」って一蹴されたけど。
里帆は、体調が最悪だった時に、広高から叩き起こされて家事をやらされた記憶が蘇った。
それがいかに辛かったかを思い出して、男性を起こす気力がなくなってしまう。
目覚めたら、彼は必ず「帰ります」と言う。「ご迷惑かけてすみませんでした」とも。そうしてまだ本調子じゃない体で、無理して出ていってしまう。
そんなの駄目だ。
里帆は、男性をこのまま休ませることにした。
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