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久しぶりのときめき
佐々木の意識が覚醒したのは、それから30分くらい経ってからのことだ。
まだ少し重い瞼を持ち上げると、知らない天井が目に入ってきて、驚いた。
「ここは……」
「あっ、目覚めましたか?」
少し怯えが混じった細い声に、首だけ動かすと、20代前半と思われる大人しそうな女性が、こちらを気遣わしげに見ていた。
佐々木は、何があったかだんだんと思い出してきた。
そうだ。貧血で倒れていたところを、彼女に見つけてもらったんだ。そして彼女の家で回復させてもらったんだ。
それに気付くと、佐々木は慌てて起き上がり、居住まいを正した。
名前も知らぬ優しい彼女に、深々と頭を下げる。
「助けてくださり、本当にありがとうございます。貴女は僕の恩人です。その恩人の家でのうのうと寝入ってしまい、一体どう詫びればいいのか……」
心苦しそうな彼の様子に、里帆も慌てて首を振る。
「気にしないでください。私が勝手にやったことですから……こちらこそ、何も聞かずに部屋にあげてしまい、申し訳ありません」
「いいえ、貴女が謝る必要はないんです」
ここで里帆は、彼の顔を改めて見た。
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