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9 セスト攻略
サジュームとガイウスが王と個人的な話をするときに使う小さな隠し部屋で、残された二人は顔を見合わせた。
「セストで何か?」とサジューム。
「…先日、現地で商売しているアナトリア人の商人が殺された。エヴァンスというらしい」
とガイウスが言った。
エヴァンスとは、セスト自治州で手広く商売をしているアナトリア出身の商人で、アナトリア国内の商人を主な取引相手としていた。リンツ子爵の遠縁にあたり、その伝手で王宮に話が入ってきた。
「すでにセストに潜入しているマリウス隊に調べさせたら、どうもガラティア人の同業者の仕業らしいが、犯人は捕まっていない」
「犯人は捕まっていない?街の警備隊は何しているんです?」
「捌ききれないんだろう」
「私兵はいたんでしょう?」
「いたが、壊滅状態だと。相手は相当の手練れと思われる」
「傭兵が敵わないということは…」
「職業軍人だろ」
「……」
サジュームは無言で空を睨んだ。
アナトリア王国とドゥランテ海峡を挟んで向き合っているガラティア王国は、現在国力が拮抗しているライバル国であった。
2年前のセデス海戦で、アナトリア王国がガラティアの船団の侵攻を退けたことをきっかけにして、この二国は競って海軍の増強に努め、その競争の恩恵を最も受けているのが、自由貿易と造船の街を持つセスト自治州だった。
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