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セストの街では好景気に沸き、以前にもまして他地域からの参入者が増えていたが、それに紛れてガラティアの軍人が入り込んでいる現状があった。ガラティアは海軍力を高めると同時に、アナトリア王国と陸続きのセスト自治州を支配下に置いて、アナトリア攻略の拠点にしようとしていた。
それを察知したアナトリア側も、遅ればせながら軍人かそれに準ずる人間をセスト自治州に送り込み、ガラティアの動向を探っていた。
「しかし、エヴァンスとやらを殺してガラティア側は何をしたかったんでしょう?」
「最初に同業者のイザコザがあって、それにガラティアの軍が力を貸したんだろうというのがマリウスの見立てだ」
マリウスは、セジュームに次ぐ地位である次席王宮魔法使いである。今回のセスト自治州の潜入はマリウスの指揮下で行われている。
「同業者とは?商売敵ですか?」とサジューム。
「ああ。木材のな。今、一番熱い商品だ。同業者のコンラッドっていうのが、モノが手に入らなくなったもんで、エヴァンスを倒して、仕入れ先の横取りをしようとした。コンラッドはガラティア人で、ガラティアに木材を流していたんだが、モノが入らなくなってガラティア向けに供給不足になったらしい。エヴァンスはもっぱらアナトリア向けの商品を扱っていたから、商人と軍の思惑が一致したんだろうな」
「なるほど。エヴァンスの仕入れ先を奪えば、アナトリアへの供給を絶てると…」
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