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「セストとの軍事同盟の話し合いに、お前が行け。ガラティアの連中をおびき寄せる餌になってもらう。お前に対して何らかの攻撃があれば、それをもとにガラティアの連中を捕まえる作戦だ」
「軍事同盟も囮の内ですか?」
「これは、本気の話。ザカリーはセストの安全のためにウチを同盟相手に選んだ。陛下も内々に了承済みだ」
「私が囮になることも?」
サジュームが横目でガイウスを見ると、
「陛下は『お前なら』って」
ガイウスが真剣な眼でサジュームを見つめた。そこには、労りもなければ、憐みもない。あるのは信頼だった。
「…分かりましたよ。陛下には全てを捧げた身ですから」
とサジュームもガイウスを見つめ返した。
「なに。悪い話ばかりでもない。マリウスからの報告で、面白い話がある。さっきアナトリアへの木材入手ルートがエヴァンス以外にあると言っただろ?あれな、やり手の新興の材木商のお陰なんだよ。かなり豊富な在庫を持っていて、セスト内だけでなくてうちにも木材が回ってきているわけだ」
「それで?新興の商人がどう面白いんですか?」
サジュームが訊くと、ガイウスは「驚くなよ」と前置きをして、
「その商人が、リアに似ているらしい」
と言った。
「リアですって!」
これまで淡々と会話してきたサジュームが初めて声を荒げた。
ガイウスは、眉を寄せながら、
「話を最後まで聞け。そいつは男なんだ」
「…男?」
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