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サジュームは気が抜けた声を出して、また椅子に座った。
「男なんだが、この商人は凄腕の魔法使いらしい。マリウスが直に見ているので、本当にそうなんだろう」とガイウス。
「魔法が使えるのですか?それで、リアに似ていて、男性で…」
サジュームが腕を組んだ。
「今回の作戦のおまけだ。お前の目で確かめてくればいい」
「…そうですね」
サジュームはウマイヤで聞いたアメリアの姿を思い浮かべた。市井に溶け込んで働く姿は重なるような気がした。
サジュームは、取り乱した自分を取り繕うように大きく深呼吸をした。
それをガイウスが見ながら、
「俺はさ、みんな幸せになったらいいなと思うんだよな」
としみじみ言った。
「なんです?突然」
「俺は、あの隠れ家の仲間のうち最年長だっただろ?どうやってみんなが生き延びるかを必死で考えていたよ。そして、俺たちは生き延びた。時代が変わり、皆それぞれの地位を得たが、せっかく生き延びた俺たちのうちの誰かが悲しい思いをしているのは、なんか嫌なんだよな」
「…」
サジュームは黙ってガイウスの言葉を待った。
「サジューム、お前には、自分の幸せを考えてほしいと思っている」
「気持ちはありがたいですが、ちょっと何を言いたいのか分かりません」
「そうか?俺は、王宮魔法使いとして来たリアに、お前が惚れちまったんだと思っていたんだがな」
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