〔一限目〕古文って恋模様が多いですわよね

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「今回取り上げる作品ですが、非常に有名な作品でしてね。」  いっそのこと、素直に聞いてしまった方がいいのでしょうか。恋人がいらっしゃるかを。色々参考にしたいのですよね…。 「ウォンツさん。」 「…はい?なんでしょう?」 「タイトさんがお見合いをされたという話、知っておりまして?」  タイトさんと言えば、厳格を人の形にしたようなお方。親御さんの理念通りに育たれ、自身の意志もしっかりとあって、これまたすごいお方。お見合いをしたと言ってもなんら可笑しな響きはないのですが…。 「いえ…初めて知ったのですが…それが、どうかされたんです?」 「なんでも、ナーバス家の御子息とのお見合いだったそうで。」 「ナーバス家の…。」  ナーバスと言えば名門一家…。過去には財閥解体を命令されるほど莫大な資産を抱えていたとの話。ですが最近は経営が奮わず、立場が危ういなどという話。もしやタイト様の厳格さとカリスマ性に惹かれたのでしょうか。ナーバス家の方々は繊細な方が多いですから…。 「なんでも婚約者候補なんですって。」 「そうなのですね…。なるほど。」 「ナーバスの御子息様、大丈夫かしら。生活を共にするとなると、お二方の相性とか──。」 「コラっ!」 「す、すみませんっ!」 「私語は慎むようにしてくださいね。ましてや噂話なんて。」  相変わらず、先生は耳がいいですね…。もはやうさぎ並みの聴力ではないでしょうか─。
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