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【朝御飯】そんな顔なさらないでくださいな
「時に、恋は残酷であると非情で酷いものであると思うのですが、アナタはどう思いますの?」
「は?」
非情だとなんだと言われても私は構わない。それほどまでに目の前のお嬢様の発言は意味が分からなかった。正直、私の寝起きが悪かったら「何言ってんですか」という言葉がポロリと溢れていただろう。踏みとどまっただけ、偉い。「は?」だけは許してほしい。
「ですから、恋は残酷であると、思いますの?」
「…朝御飯のお供にする話題ではないと思うのですが。」
「…オホホ。」
「なーにが、オホホですか。何が!危うく誤嚥するところだったじゃないですか!」
「今日はお元気ですのね。」
「おかげさまで。」
「で、アナタはどう思いますの?」
「……いや、前提として、なんで私にそのような恋といったカテゴリーの持論があると思ったんです?」
「え?…それは、豊富そうだから。」
「…ホウフ〜?」
このお嬢様、何言ってんだ。何が豊富なのか言ってみろ。悪態つきたいのをこっちは我慢しているんだ。
朝から重たい話題をふっかけてくるこのお嬢様、ウォンツ嬢と人々から呼ばれてる。れっきとしたいい家柄の娘ではあるのだが、世間知らずというか世の中をなんだと思っているのか、時々真剣な顔でふざけたことを吐かす。そして、そんなお嬢様と朝御飯を共にしている私はウィンである。お嬢様からは語呂が良いからという理由だけで、ミス・ウィンウィンと呼ばれている。ミスは百歩譲って受け入れられるが、何故ウィン“ウィン”なのだ。私の性格も相まって、利益あればなんでも良いみたいな人情の欠片もないように聞こえるじゃないか。
「えぇ。豊富じゃないの?」
「何を見て豊富だと思ったんですかね、ホント。」
「え?そうねぇ…雰囲気。」
「年齢と恋人いない歴がイコールの私ですよ。もう一度聞きます。豊富に見えます?」
「…経験が豊富。」
なんだこのお嬢様。
「ほざけ。」
「あぁん、酷い〜。」
このお嬢様、私と同い年なのだが、どうしてこうも子供っぽいのだろう。どうして私の雇い主は、私の荒い言葉遣いにツッコまない。いっそのこと解雇されても良い。お金は貰えなくて良いから、退職金とかなくて良いから、辞めたい。辞められないのなら、このお嬢様の世話を一日でもいいから別の誰かに任せたい…。
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