ウォンツ嬢とミス・ウィンウィンの逃避行

〔ランチタイム〕空腹感からの苛立ちではないと─

　タイトさんの言葉一つ一つが私の心に刺さっていました。私は見合いの話に何故苛立っていたのか今なら少し分かる気がするのです。
「…恋とも愛とも言えない好意ってなんなんでしょうね。」
「さぁ？まさか恋してるの？」
「もしかしたら…ね。」
「…不躾で申し訳ないですけどお相手は？」
「…大事な人とだけ言っておきましょうか。」
　お茶を濁した発言にも関わらずタイトさんはそれ以上追求をしなかった。
「見合い結婚をどう思いますか？」
　食事も終わる頃にそんな質問をすると、タイト様は複雑そうな顔をした。噂と少し絡む部分があったからでしょう。
「…別にダメだとは思わないけど、私はちゃんとある程度の妥協の範囲内でお互いを労われる関係でいられる人を選ぶわ。貴女は？」
「…きっと同じです。」
「理想と現実には大きな差があるのは分かるけれど、それでも理想くらいあるわよね。」
「…えぇ。親に決められて見合いをすることすら私は寒気がします。」
　小さくそう呟いた。
　私のあの時の苛立ちは─まだかすかに燻っていた。嗚呼─早くウィンさんに会いたい。