〔五限目〕リリカルに本望に

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〔五限目〕リリカルに本望に

「文字とは、己の伝えたいことを世界中の人にきちんと伝えるために存在しているのです。言葉とは、他人との意思疎通をするための手段なのです。それを上手く使えないうちは、語弊を生むようなことになってしまううちは、発信など言語道断なのです。」  そう言って始まったのは、現代文の授業でした。と言っても今日は特別な授業体制のようです。教卓の上の包み─サイズからして原稿用紙でしょう。何か作文をしろということでしょうか。 「今日は、あなた達が思っていることを思うままに書いて欲しいと思っています。綺麗な形でなくてもいいのです。この分は余計だと感じたら線でも引いたりすればいい。付け加えたければ余白に書き加えてもいい。誤字や脱字以外で、消しゴムをあまり使ってほしくないのです。」  リリカル先生は、普段から感受性が豊かな方です。知識も豊富で想像力も豊か。今の私の書き殴りになるであろう文を見ても汲み取ってくれるのでしょうか。 「一人最低でも二枚分は書いてくれると嬉しいです。スマートな文が悪いわけではないですが、皆さんの今感じていることを表現する為には原稿用紙二枚では事足りないと思っているのです。もちろん、上手く表現できないのならそれもまた一つ文章。素直な気持ちで書いてください。完成した人から持ってきてくださいね。」  先生は、原稿用紙を一人二枚ずつ配布を終えるとパソコンを取り出して何やら忙しそうに作業を始めました。
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