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《予鈴のチャイム》恋とか愛とか人情だとか
ミス・ウィンウィンは気難しい顔でウォンツ嬢の着替えを手伝っていた。
「そんな顔なさらないでくださいな。そこまで難しく考える必要はないんですのよ?アナタが思うがままに教えてくだされば良いんですのよ?」
「ぐぅぅ…それに苦戦してるんですよぉ〜?」
「理解しかねます。」
「あぁ!もう!」
ミス・ウィンウィンの普段以上の手際の悪さにウォンツ嬢は微笑んだ。怒っているわけではないのだが、その笑みがミス・ウィンウィンの焦燥感を加速させたようだ。
「大丈夫ですか?」
「だぁれのせいだと思ってんですかぁ…。」
「ですから気難しいお顔をして考えなくてもいいんですのよ?思ったことを言葉に発していただければ。とはいえあまりにも抽象的すぎる話題でしたかね?」
「ゔぁぁ…そうじゃなぁいんだなぁ。」
ミス・ウィンウィンは空いた手をワキワキと動かす。その動作にウォンツ嬢はまたもニコリと笑っていた。
「今日も着付けをありがとうございます。」
「いぃいぃえぇ…。」
嗄れた声でミス・ウィンウィンが応じる。ウォンツ嬢は立ち上がって上着を整えると「では、ワタクシはロビーで待っているので」と言葉を残す。
「はいぃ…。」
ミス・ウィンウィンは朝から疲弊していた。昨晩はちゃんと寝た。今朝の寝起きも悪くはなかった。食欲もあるし、機嫌も悪い訳ではない。そうなると、彼女を疲れさせている足枷はただ一つ─。
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