《放課後》光入り乱れ

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 そんな彼女をじっと見つめる少女がいた。 「ウォンツさーん?信号変わってます。」 「あっ…失礼しました。ついつい。」  ウォンツ嬢だった。その隣ではゴシップが水筒の中身を飲み干していた。 「て言うかなんで家に誘ったんですか。」  ゴシップの問いにウォンツ嬢は口籠る。普段なら気丈な振る舞いで「直接お話するのもいいかと思いまして」と返せるが、できなかった。やっとのことで絞り出した言葉は「なんとなくです」であった。 「不思議な人だなぁ…掴み所がない人だとは思ってましたがますます…。」 「先に言っておくとあまり新聞のネタになるようなものは得られないと思いますよ。」 「…げっ。」 「図星でしたか?」 「なんで分かりますかねぇ。」 「慧眼。」  ニコッとウォンツ嬢が微笑んで返答する。 「ところで、ご両親は?」 「遠方の方に。私が自ら望んでここで暮らしているのです。」  ゴシップがふぅんと鼻を鳴らす。 「本当にいいネタないんですか?」 「いいネタになるようなものはないですよ。使用人は一人しかいない上に…今は不在なので。」  ウォンツ嬢は、ニコリと笑った。しかしそんな表情とは裏腹にウォンツ嬢の心はチクリと痛んでいた─。
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