《予鈴のチャイム》恋とか愛とか人情だとか

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*  予鈴が鳴るよりも十分以上早く教室に着く。それがミス・ウィンウィンの中で適用されている日々のルールであった。いつもと違う朝を迎えていても、そのルールが曲がることはなかった。 「はよ〜っす。」 「あぁ、おはよう。」 「今日もポーカーフェイスだねぇ。」 「作りたくて作ってるものでもないけど。」 「まぁまぁ。それがウィンの良さでもあるっしょ。」 「そうだねぇ。」  ミス・ウィンウィンの元にやってきたのは、一卵性双生児であるアンとニュイだった。アンは双子の姉で飽きっぽい性格のギャル。ニュイはのんびりとした性格で気怠げな表情の双子の妹である。ニュイの方はギャルというよりも、ゆるふわという表現の方がしっくりくる。  ミス・ウィンウィンはいい機会だと思い、恋とは何かを尋ねる。 「恋?うーん。ドキドキするもんっしょ?」 「私は心を満たしてくれるものだと思うねぇ〜。」 「いやいや、そんな安らぐもんじゃないって。どっちかって言うと愛っしょ、ソレは。」 「あぁ〜、そうかもだねぇ〜。」  ミス・ウィンウィンはポーカーフェイスを依然として貫いていたが、心の中の彼女は目を回していた。恋どころか愛が出てきた。アンとニュイ、略してアンニュイは何を言っているんだと─。今にも知恵熱を起こしそうだった。 「ていうかどした?急に恋って何か聞いちゃったりして。何?初恋?」 「いや違う。」 「じゃぁ何?」 「……いや雇い主が、恋とは何かって質問ふっかけてきた。それで…。」 「なるほど。でもやっぱりドキドキするもんっしょ。」 「……アオハルは?」 「甘酸っぺ。」 「憧れるねぇ〜。」 「…でもアオハル=恋じゃないでしょ。」 「友情も人情も色々ひっくるめてアオハルだねぇ〜。」  ニュイのその言葉にミス・ウィンウィンは柄にもなく下唇をキッと噛み締める。友情と人情が追加されてしまった! 「恋って何ぃ…。」 「正直人によるんじゃね?ウチはドキドキだけどさ。そうじゃない人もいるし。」 「アンはドキドキジェットコースターでも、私はゆらゆらメリーゴーランドだし〜。足並み揃えて大好き〜みたいな〜。」 「テーマパークじゃんね?」 「恋はテーマパーク…?」 「「いやいや。」」
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