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予鈴が鳴るよりも十分以上早く教室に着く。それがミス・ウィンウィンの中で適用されている日々のルールであった。いつもと違う朝を迎えていても、そのルールが曲がることはなかった。
「はよ〜っす。」
「あぁ、おはよう。」
「今日もポーカーフェイスだねぇ。」
「作りたくて作ってるものでもないけど。」
「まぁまぁ。それがウィンの良さでもあるっしょ。」
「そうだねぇ。」
ミス・ウィンウィンの元にやってきたのは、一卵性双生児であるアンとニュイだった。アンは双子の姉で飽きっぽい性格のギャル。ニュイはのんびりとした性格で気怠げな表情の双子の妹である。ニュイの方はギャルというよりも、ゆるふわという表現の方がしっくりくる。
ミス・ウィンウィンはいい機会だと思い、恋とは何かを尋ねる。
「恋?うーん。ドキドキするもんっしょ?」
「私は心を満たしてくれるものだと思うねぇ〜。」
「いやいや、そんな安らぐもんじゃないって。どっちかって言うと愛っしょ、ソレは。」
「あぁ〜、そうかもだねぇ〜。」
ミス・ウィンウィンはポーカーフェイスを依然として貫いていたが、心の中の彼女は目を回していた。恋どころか愛が出てきた。アンとニュイ、略してアンニュイは何を言っているんだと─。今にも知恵熱を起こしそうだった。
「ていうかどした?急に恋って何か聞いちゃったりして。何?初恋?」
「いや違う。」
「じゃぁ何?」
「……いや雇い主が、恋とは何かって質問ふっかけてきた。それで…。」
「なるほど。でもやっぱりドキドキするもんっしょ。」
「……アオハルは?」
「甘酸っぺ。」
「憧れるねぇ〜。」
「…でもアオハル=恋じゃないでしょ。」
「友情も人情も色々ひっくるめてアオハルだねぇ〜。」
ニュイのその言葉にミス・ウィンウィンは柄にもなく下唇をキッと噛み締める。友情と人情が追加されてしまった!
「恋って何ぃ…。」
「正直人によるんじゃね?ウチはドキドキだけどさ。そうじゃない人もいるし。」
「アンはドキドキジェットコースターでも、私はゆらゆらメリーゴーランドだし〜。足並み揃えて大好き〜みたいな〜。」
「テーマパークじゃんね?」
「恋はテーマパーク…?」
「「いやいや。」」
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