第1章 会社の御曹司に「処女を貰ってください」と言ってみたら

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「……あの、夏目、さん」  ゆっくりと彼の名前を呼んでみる。  すると、彼の視線が芽依菜に注がれた。何処となく色っぽくて、艶めかしい。本当に、美しい男性だ。 「はい。というか、名前……」 「先ほど、小宮山さんから聞きました」  そう言えば、康介がふっと口元を緩めた。その表情さえ、色っぽくてたまらない。男性経験のない芽依菜でさえ、くらくらとしてしまうのだ。そりゃあ、女性社員が熱を上げるのも納得がいく。 「……っていうか、元から俺の名前知っていたでしょうに」  何を思ったのだろうか。康介がそう言って、グラスを持って芽依菜の隣に腰を下ろす。彼の目が、芽依菜だけを映している。  ……心臓がどくん、どくんと大きく音を鳴らす。 「うちの社員でしょう? 白岩 芽依菜さん」  頬杖をついた彼が、そう問いかけてくる。……その瞬間、芽依菜の心臓がひときわ大きく高鳴った。 「……し、って」 「えぇ、あなたは有名ですからね」  それだけを伝えた康介が、ごくりと水を飲む。水を呑み込んだだけなのに、途方もない色気を放つ彼。  ここに来るまでにすでに飲んだのか、仄かに赤い頬が、尚更それを増幅させる。 「有名……って」 「数々の男性社員を虜にしているのに、全員袖にするって」  けらけらと笑いつつ、康介がそういう。  ……そんな噂、でたらめだ。そもそも、不本意すぎる。
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