第1章 会社の御曹司に「処女を貰ってください」と言ってみたら

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「そんなわけ、ないじゃないですか」  つんと澄ましてそう言えば、康介が眉を上げた。彼の口からは「へぇ」という声が上がっている。  康介を一瞥し、芽依菜も出来る限り色っぽく笑ってやった。 「私、男性を虜にする術なんて、知りませんから」  小首をかしげて、はっきりとそう告げてみる。康介の顔に驚きの表情が宿る。 「そもそも、私、仕事一筋ですし。学生の頃は勉強しかしてませんでしたし」 「……へぇ」 「男性経験も、交際経験もありませんよ。……夏目さんには、縁のないことでしょうがね」  意地悪く、そう告げてみる。  芽依菜は知っている。目の前の彼が、いわばプレイボーイと呼ばれるような人種であるということを。 「夏目さんは、女性に苦労したことがなさそうで」  こんなこと、会社の御曹司にたたけるような言葉じゃない。でも、このときの芽依菜は冷静な思考回路を完全に失っていた。
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