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「そんなわけ、ないじゃないですか」
つんと澄ましてそう言えば、康介が眉を上げた。彼の口からは「へぇ」という声が上がっている。
康介を一瞥し、芽依菜も出来る限り色っぽく笑ってやった。
「私、男性を虜にする術なんて、知りませんから」
小首をかしげて、はっきりとそう告げてみる。康介の顔に驚きの表情が宿る。
「そもそも、私、仕事一筋ですし。学生の頃は勉強しかしてませんでしたし」
「……へぇ」
「男性経験も、交際経験もありませんよ。……夏目さんには、縁のないことでしょうがね」
意地悪く、そう告げてみる。
芽依菜は知っている。目の前の彼が、いわばプレイボーイと呼ばれるような人種であるということを。
「夏目さんは、女性に苦労したことがなさそうで」
こんなこと、会社の御曹司にたたけるような言葉じゃない。でも、このときの芽依菜は冷静な思考回路を完全に失っていた。
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